田平天主堂といえば、正面中央にある八角形のドームを頂く鐘塔しょうとうが特徴の一つ。鐘は創建当時にフランスから取り寄せたもの。自動機械によって鐘を鳴らす教会が多い中、田平天主堂では今も朝夕の1日2回(ミサがある日は寄せ鐘よせがねも)、人の手で鐘が鳴らされている。

鐘を鳴らすのは決められた信徒の当番制。当番の一人高野幸男たかのゆきおさんは「心配ごとがあったり、心が焦っている時などは、音に出るんです」と語る。また、鳴らす人によっても音は違うそうで、音を聞けば誰が鳴らしているか、おおよそわかるという。

紐を力強く引いて、鐘を鳴らす。高らかに鳴り響く鐘の音に、りっぱな教会堂を残してくれた先人への感謝の祈りが込められている。