国の重要文化的景観に選定されている、笛吹区の古い木造住宅の町並みや素朴な漁師まち、やなぎ地区の松林など、小値賀の6地区に残る昔ながらの風景は、まるで時間がとまったような錯覚さえ覚える。

また、外国人客からの評価も高い小値賀島の民泊は、伝統的な日本の暮らしの中での家族的なもてなしが人気だ。「昔のまま」は風景だけでなく、人のあたたかさや人情にも残っている。

野崎島の旧野首教会堂もそんな町の風土が残したもの。集団離島後、無人の島で荒廃していた教会堂を、町が長崎大司教区に無償譲渡をお願いし、修復保存工事を行った。江戸時代構築の民家で今も現役の活版印刷所を営む笛吹地区の横山弘藏さんは「教会は小値賀の歴史とつながっている、別ものじゃない」と語る。小値賀が持つ大切なものを残す力と伝える心が、未来への遺産となる旧野首教会堂を残したのだ。