長崎市にある伊王島いおうじまは、かつて島民の約6割が信者だったという祈りの島。南と北に二つのキリシタン集落があり、先祖の多くは潜伏期に弾圧を逃れてきた移住者たちである。

信徒発見後の1871年、馬込まごめ集落の信徒たちは「椎山しいやま小聖堂」という木造瓦葺きの建物をつくった。1871年といえば、まだ禁教の時代である。それにも関わらず、奥行4間、間口2間の聖堂をつくったという。その後1879年に北部の大明寺だいみょうじ地区に大明寺教会堂が創建される。

本格的な馬込教会が建てられたのは、1890年、フランス人のマルマン神父が赴任してからである。マルマン神父は現在地に煉瓦造の本格的な天主堂を建てた。その天主堂はとても素晴らしいものであったが、残念ながら昭和初期の強い台風により壊滅。1931年に耐久性のあるコンクリート造りに生まれ変わり今に至っている。

ところで、創建当時の馬込教会の名称は「聖ミカエル天主堂」である。馬込教会の中に入ると、その名のとおり正面祭壇上に大天使聖ミカエル像が掲げられている。カトリック教会ではミカエルをガブリエル、ラファエルと並ぶ三大天使の一人としており、ヨーロッパにはミカエルに捧げられた教会や修道院が数多くつくられている。有名なものとしてはフランスのモン・サン・ミシェルがあげられる。建物は台風で壊れてしまったが、創建当時の香りは残されている。