黒島天主堂内の祭壇の床に敷かれている1800枚のタイルは、明治初期、松尾徳助まつおとくすけが日本で初めて工場生産した有田焼の磁器タイルである。

このタイルが黒島以外に現存している例として、佐賀県唐津市の旧高取邸たかとりていのトイレ(大隈重信おおくましげのぶ来訪のために作られたもの)が知られているが、なんと長崎県内にあと2箇所、同じタイルが使われている場所がある。

一つは、五島市の三井楽みいらく教会堂のモザイク壁画。貝殻や陶器など地元ゆかりの素材の中に、黒島天主堂と同じタイルが10数枚組み込まれている。もう一箇所は、上五島の小値賀町おぢかちょう歴史民族資料館として開放されている旧小田家のトイレである。江戸時代に捕鯨ほげいで財を成した小田家が、明治になってトイレを増築する際にこのタイルを使用したようである。

どちらの例も、どのような理由、経路で黒島天主堂と同じタイルを使用したのかは今のところ不明であるが、当時の歴史を紐解きながら推理を巡らすのも楽しい。