﨑津さきつから車で約30分。地図にも載っていないような山道の途中に「根引ねびき」と呼ばれる場所がある。地元の方の案内がなければたどり着けない山深き聖地。ここに孤児院があったという。古い井戸と復元された木造の子部屋。林立する杉の木の間には小路が整備され、山頂付近には木製の大きな十字架と聖母マリアの像が立っている。

孤児院は「根引きの子部屋」と呼ばれ、フランス人のフェリエ神父が明治初期に建設。貧しさの中で食べ物に困り、人の畑の作物を勝手に食べ荒らしてきた子どもたちを引き取り、自立をうながした場所である。神父は教会から食料を運び、またみんなで周囲を開墾したりして畑を広げたという。時間が流れ、孤児院跡が発見されたのは1960年代、決め手は古い井戸。当時は草木に覆われていたようだ。1981年に赴任したダイヤモンド神父は毎日のようにここを訪れ、草木を取り除き整備をすすめた。現在、毎年5月と10月にミサが行われている。