枯松神社かれまつじんじゃは、禁教時代に外海地方で活動した日本人伝道士バスチャンの師であるサン・ジワン神父を祀っている。全国的にも珍しいキリシタン神社で、外海のかくれキリシタンの聖地のひとつとされている。神社といっても鳥居はなく、小さな社殿がひっそりとあるだけ。厳しい弾圧の中、信仰がばれないように神社としてカムフラージュしたなごりである。

枯松神社では、2000年より毎年11月3日に「枯松神社際」が行われている。サン・ジワンとその信仰を守り続けた先祖たちの霊を慰める祈りの行事だが、特徴的なのは、カトリックと仏教徒、旧キリシタン(かくれキリシタン)が一堂に会して祭りを行うことだ。カトリック教会による慰霊ミサやかくれキリシタンの代表によるオラショ奉納など、緑深い山林の小さな神社を前に行われる儀式はとても神聖で、神秘的な雰囲気が漂う。

禁教時代、外海のキリシタンは表面上、寺の檀家となって暮らしていた。その中には、キリスト教が解禁になってからも教会には復帰せず、そのまま仏教徒として先祖が継承した潜伏期の信仰を守り続ける人たちもいた。そのような信者は「かくれキリシタン」と呼ばれ、外海では現在も数戸の家で信仰が継承されている。枯松神社のすぐそばにある墓地を訪ねると、キリスト教の洗礼名と仏教の戒名が一緒に刻まれている、かくれキリシタンの家の墓石があり、「枯松神社際」と同様に、外海の信仰の複雑さを物語っている。