みなみ島原市には112基のキリシタン墓碑が点在し、この数は国内で最も多いとされる。その中でもひと際目を引く墓碑がある。砂岩に美しく彫られた花十字、ポルトガル語で名前などが書かれた半円柱形の伏型墓石である。

布教初期、宣教師たちは墓の場所を選定し、柵で区切った後、大きな木製の十字架を建てて、その土地を祝福したとされる。十字架の周りに死者を埋葬した。その形は今でも見られる。平戸市の田平教会堂に隣接する墓所は真ん中に十字を建て、4つの区画に分けて男女、成人か子どもかによって埋葬しているという。さらに血縁ではなく、亡くなった順に葬られているそうだ。この配置は教会に属する人たちをひとつの家族とみていることの表れだという。

しかし、1600年代に入ると十字架などを彫り込んだ伏型のキリシタン墓碑が登場する。ドミニコ会やフランシスコ会などのさまざまな宗派が国内で布教する中、信者獲得に墓石を利用した可能性もあるという。