寺田一男さんは、春日集落で先祖から伝わる「神様」を守り続けているひとりだ。自宅には神棚、仏壇などが合計三つあり、それぞれに手を合わせるという。「安満岳を拝んだあとに家の中にある神様にお祈りします。昔は神棚の奥にロザリオが隠されていて、おじいさんはいつも不思議なお祈りをしていました」。寺田さんの祖父、作太郎さんは熱心なキリシタンで、一番位の高い「御爺役」として季節ごとの儀式などをとりしきっていたという。「病人が出た時は、縄を編んでつくった鞭『オテンペンシャ』で病人の体をたたいておはらいをしていました」。しかし今では集落のほとんどの人が仏教徒に改宗し、かくれキリシタン時代の儀礼を知る人はほとんどいない。「ここには貴重な歴史があります。信徒たちが開拓してきた美しい棚田風景を多くの方に見て欲しい」。先祖が愛したこの土地を寺田さんは守り続けている。