天草キリシタン館に所蔵されている天草四郎陣中旗。正式名称は「綸子地著色聖体秘蹟図指物」といい、畳半分ほどもある大きな絹製の指物である。中央にはカリス(聖杯)、その上に十字架をつけたホスチア(聖体)、その両側に合掌礼拝する天使が描かれている。油絵ながら細かい線でデッサン風に仕上げられており、当時の芸術性の高さがうかがえる。
作者については、一揆に参加した南蛮絵師山田右衛門作という説と、有馬セミナリヨまたは長崎のコレジヨなどで描かれたなどの説がある。一揆軍の信仰の象徴および結束のシンボルとして原城内に掲げられていたという。
旗の表面の赤い斑点状のものは血痕で、所々に刀や槍などの裂傷も見られる。これは原城総攻撃が行われた1638年2月28日のものと思われ、この日、佐賀鍋島藩の鍋島大膳が一揆勢から旗を奪い取ったと記録に残っている。一揆後、戦功を讃えるものとして子孫に継承されたが、昭和30年代以降、所有者の変遷があり、1995年に本渡市(当時)に寄贈された。傷みやすい材質であるため、現在は一年間に30日間のみ展示公開(他の日はレプリカを展示)されている。