西日を正面に浴びて青砂ヶ浦天主堂の煉瓦が一層美しく輝く。鉄川与助による煉瓦造りの教会堂はこれが2番目であり、均整のとれた構造と細部に渡る優れた意匠は、この後に建築された煉瓦造り教会堂の基本となった。正面入り口は植物模様の柱頭飾りを施した石造りアーチになっており、ここにも地元・かみ五島の頭ヶ島付近の採石場で採られた五島石ごとういしが使われている。そのまま上へ目線を移すと、薔薇窓の枠、そして屋根から十字架にいたるまで良質の五島石が使われている。煉瓦は川棚や早岐付近から、木造資材は野崎島から運ばれ、それを信徒たちが眼下に広がる奈摩湾の海岸から現場まで背負って運んだという。当時の信徒戸数は約50戸。建設に熱心だった当時の大崎おおさき神父とともに力を合わせて造った美しい祈りの場が上五島の海沿いに立っている。