枯松かれまつ神社に登る参道の左側に、大人が数人隠れるほどの大きな岩がある。ここは、潜伏時代、キリシタンが年に一度、復活祭前の「悲しみのせつ」の夜にオラショを唱えた場所で、「祈りの岩」と呼ばれている。潜伏期、普段は周りに気づかれることを恐れ、声に出してオラショを唱えることはなかったが、この日だけは見張り役を立て岩陰に隠れるようにしてオラショを唱えたという。オラショを教え、継承する場でもあった。

また、祈りの岩の近くには自然石を置いただけのキリシタン墓がある。潜伏期の墓参りでは墓石の上に白い小石を十字の形に並べて祈り、その後は見つからないように小石をバラバラにして帰っていたという。今でもその風習のなごりで墓石の上には白い小石が置かれている。祈りの岩とともに、昼間でも薄暗い山林に囲まれた静かな聖地である。