外海の潜伏キリシタンたちが約250年もの間、信仰を継続できた理由。その一つにあげられているのが、「バスチャンの日繰り」と呼ばれる教会暦だ。キリストの生涯に関する祭式を年間に配分した典礼暦で、1年を通じて信仰心を高揚させるように作られている。

もともと1550年、フランシスコ・ザビエルは同年の教会暦を鹿児島の信徒に与え、日本に活版印刷所が設けられた1590年以降は、和漢字の日繰りも登場した。バスチャンの日繰りもこれらにならって1634年の教会暦(グレゴリオ暦)を太陰暦に改編したもので、バスチャンは師ジワンから暦の繰り方を教わり、それを外海のキリシタンに伝えたといわれている。

暦は、陰暦「二月二十六日、さんたまりやの御つげの日」に始まり、翌年「正月三日、さんぜのびよ丸じ」(聖ジノビオ殉教者、丸じはマルチル=殉教者が訛ったもの)に終わる。「さんたまりやの御つげ」は、大天使ガブリエルが聖マリアにキリスト受胎を告げた日で、つまりキリストの生涯の起点になるもので、キリシタンにとって最も大切な祝日の一つであったことがわかる。