黒島天主堂内の建築資材でもっとも興味深いのは、祭壇の床に敷かれている千枚以上のタイルである。松尾徳助が日本で初めて工場生産した有田焼の磁器タイルで、現物が大量に存在している例は他にはない。ステンドグラス越しの光がタイルを照らし出す光景は黒島天主堂ならではである。また、堂内の列柱は16本の半円形の付柱からなる「束ね柱」といわれるもので、その土台には黒島産の御影石(花こう岩)が、教会堂そのものの土台(石垣)にも島内の石が使用されている。

建築に造詣が深く、黒島に赴任するまでに10以上の教会堂を建てたマルマン神父。その集大成となる黒島天主堂の建築にあたっては最高のものを造りたいという想いと、できるだけ地元の素材を使って島の人に愛される教会堂にしたいという想いが交錯したのだろう。その想いのコラボレーションが天主堂の完成度にいっそう磨きをかけている。