おらしょ こころ旅

Vol.56

“寝ながら読書”からの脱却

2015年7月27日 公開

文庫本を手にして布団に入るようになったのはいつ頃だったのでしょうか。一人前に眠れない夜を経験するようになってからだとすると、会社勤務を始めた頃だったかもしれません。

ただ、読み始めてからわりと早い段階で眠くなり、そのあとは一気にまぶたがおりて眠りに突入することを知ったのはそれを始めてすぐのことでした。

そんな読み方だからストーリーはいつもおぼろげで、続きを読もうと本を開いても数ページ前に戻って読み返し、「そうそう、そうだった」と納得したあとはそこから1、2ページ進んだあたりで見事に沈没するのでした。

このペースで300ページ以上の小説を読むとなると1年近くかかる。これはいかんと思いつつ早数十年、なぜだかこのタイミングで、読んだことがあるのかないのかわからない本棚の小説を寝ながらではなく、いくぶん集中して1冊ずつ読破していこうと思ったのです。

まず手にしたのは、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴが主人公の長編小説、遠藤周作の『沈黙』でした。

拷問に苦しむ信者たちに神は救いの手をさしのべることなく沈黙したまま。信者たちの祈りは神に届いているのか、そもそも神は存在するのか。そんな根源的な問いが胸に突き刺さる作品でした。

1週間で読み終えた260ページあまり。やればできる、さて次は・・・と本棚の前をうろうろしていると、「無理をしないようにね。もともと読書が好きなほうじゃないんだから」。背後から連れ合いの声が聞こえました。ごもっとも。次は短編にしときますか。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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