おらしょ こころ旅

Vol.226

日葡辞書

2018年11月12日 公開

先日、新聞を読んでいると、17世紀初めに長崎で印刷された「日葡(にっぽ)辞書」がブラジル・リオデジャネイロの国立図書館で見つかったという記事がありました。

日本の言語をポルトガル語で解説したこの辞書は、外国人宣教師の日本語習得のためにイエズス会が刊行したもので、当時の口語、文語、仏教語、方言など約3万2800語が収録されているそうです。

印刷された17世紀初めといえば江戸幕府が開かれた頃のこと。統一政権の確立とともにさらに禁教政策が進められ、教会は破壊され、宣教師は国外へ追放。布教用の書物の多くが焼却されました。

見つかった日葡辞書はそんな厳しい時代を生き抜いた貴重な一冊なのです。

この辞書には「武将」や「足軽」など時代を反映した言葉のほかに、「片思い」や「夜這い」といった布教には直接関係のない、民衆の生活に関わる言葉も収録されているそうです。

どういったいきさつで掲載することになったのでしょうか。

「片思い」というせつない心の有り様や、日本古来の風習ともいえる「夜這い」のことを知ったとき、宣教師たちはどのようなことを感じたのでしょうか。興味は尽きません。

禁教政策によって思うように布教活動ができない中、来日するであろう仲間たちのために一生懸命に辞書づくりに励んだ神父や信徒たち。

その惜しみない努力が、2世紀を越える禁教期の向こうにあった「信徒発見」へとつながったのでしょうね。

潜伏キリシタンの歴史の解明に新たな光を投げかける今回の発見。これを機にさらに様々な文献が見つかることを期待したいですね。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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