おらしょ こころ旅

Vol.202

「見える」と「見立てる」

2018年5月28日 公開

小学3年生の頃、夜遅くに始まる刑事もののラジオドラマがありました。

コツ、コツ、コツ、コツと靴音が近づいてきてピタリと止まり、ギーッとドアが開く音がして男が低い声でこう言うのです。

犯人(ホシ)をあげろ!

このタイトルコールが流れるといつも急いで布団の中に潜り込んでいたのですが、番組が終わっても恐怖が消え去ることはなく、天井の木目が幽霊の顔のように見えてしばらくは眠れませんでした。

何かが何かに見えるというのはその人の心情によるところが大きいようで、月にウサギが住んでいると言われたら、満月の真ん中の模様がなんだかウサギの形に見えてきたりするのでした。

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つである天草の﨑津集落では、かつてアワビやタイラギの貝殻の内側の模様を聖母マリアに見立てて崇敬したそうです。

「見える」と「見立てる」では見る側の想いが異なるのでしょうが、それが怖いものに見えたり、心の支えになったりするのですから、人間の想像力って本当にすごい!と思います。

ひょっとしたらあの人はこんなことを言いたかったのではないか、こんなことを求めていたのではないか。

想像力を働かせてみると、今まで見えなかったものが見えてくるのかもしれませんね。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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